【重要】性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第4版)を知ろう
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kanato67

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「性同一性障害の治療は日本精神学会のガイドラインに沿って安全に進めていく」と言われていますが、そもそもガイドラインには何が書かれているの?

現在の最新版は第4版で2018年01月20日に一部改定しています。今回は第4版と改定版も一緒に記載しましたのでご覧ください。

 

はじめに

わが国における性同一性障害に関する医療は、法的な問題などのため諸外国に比 すると特有の歴史を辿ってきたが、平成10年10月16日、埼玉医科大学において、わが国で初めて公に性同一性障害の治療として性別適合手術が施行されて以降、次第に臨床活動が普及するようになった。

平成15年07月に、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(特例法) が 成立し平成16年07月から施行された。この法律によって、性同一性障害者は、性別適合手術の実施を含む一定の条件のもとで戸籍の性別変更ができるようになった。

 

このような経緯を考慮して日本精神神経学会・性同一性障害に関する委員会は、「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」(ガイドライン)の果たした役割について再度検証を加え、性別適合手術適応判定を倫理委員会にゆだねるのではなく医療チームの検討によって実施することを改変の骨子とした第3版ガイドラインを、平成18年01月に報告した。

 

医療チームの独立性が高まるなか、治療情報の普及に伴って多様な受診者が専門医療機関を訪れるようになった。そのなかで特に若年層での受診者の問題が浮上し、諸外国で実施されている二次性徴抑制ホルモンによる治療をガイドラインのな かにどう位置づけるかが、議論の焦点になった。今回、日本精神神経学会・性同一性障害に関する委員会は、この点を中心に検討を重ね、第4版ガ イドラインを作成した。検討は直接面談による会議だけでなく、メーリングリストを用いたインタ ーネット上でも続けられた。

 

Ⅰ.わが国における性同一性障害の医療の歴史 ―― 特に「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」との関連を中心に ――

1.「ブルーボーイ事件」と「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」

いわゆるブルーボーイ事件〔東京地方裁判所 昭和40年(わ)第307号・第339号・同年(特わ)第927号事件2〕とは、3人の男性性転向症者(性転換症者、あるいは中核的性同一性障害者を指すと考えられる、委員会註)である男娼(ブ ルーボーイ)の求めに応じて、法定の除外事由がないのに、ゆえなく生殖を不能にすることを目的として睾丸摘出、陰茎切除、造腟など一連の性転換手術を行ったとして、手術を行った産婦人科医 は優生保護法違反の責任が問われて昭和44年02月15日東京地裁刑事12部において有罪とされた事件のことである 。

 

判決を不服とした被告人は東京高等裁判所に控 訴したが、優生保護法28条「何人も,この法律の規定による場合の外、故なく、生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行 ってはならない」という規定に違反したとして、第二審の東京高等裁判所は昭和45年11月11日に第一審と同様に有罪の判決を申し渡した。さらに判決には「性転換手術に関する考え方」が次のように示されている。

「現在日本においては、性転換手術に関する医 学研究も十分ではなく、医学的な前提条件ないしは適用基準は勿論法的な基準や措置も明確でない が、少なくとも次のような条件が必要であると考える。

(イ)手術前には精神医学ないし心理学的な検査と一定期間にわたる観察を行うべきである。

(ロ)当該患者の家族関係、生活史や将来の生活環境に関する調査が行われるべきである。

(ハ)手術の適応は、精神科医を混えた専門を異にする複数の医師により検討されたうえで決定され、能力のある医師により実施されるべきである。

(ニ)診療録はもちろん調査、検査等の資料が作成され、保存されるべきである。

(ホ)性転換手術の限界と危険性を十分理解し うる能力のある患者に対してのみ手術を行うべきであり、その際手術に関して本人の同意は勿論、配偶者のある場合は配偶者の、未成年者については一定の保護者の同意を得るべきである。」このように性同一性障害の診断と治療に関する正当な医療とするための基準が示されており、さらに判決では「本件手術に対する評価」として次のように記述されている。「本件被手術者はいずれも性転向症者であると推認することができる。そこで性転換手術が正当 な医療行為として許容されるための前記の条件に 照らしてみるに、…(中略)…従って被告人が本件手術に際し、より慎重に医学の他の分野からの検討をも受けるなどして厳格な手続きを進めていたとすれば、これを正当な医療行為と見うる余地 があったかもしれないが、格別差し迫った緊急の必要もないのに右の如く自己の判断のみに基づい て、依頼されるや十分な検査、調査もしないで手術を行ったことはなんとしても軽率の謗りを免れないのであって、現在の医学常識から見てこれを 正当な医療行為として容認できないものというべ きである。」

 

以上が「ブルーボーイ事件」の概要である。治 療の対象とされたのは性転向者(性転換者、委員会註)と考えられ、結果的には性同一性障害者に対して性別適合手術を行ったと考えられるが、判 決では、十分な診察、検査、検討を行わずに、また同意なども得られていないなど手続きが不完全であることから正当な医療行為として容認できないとしている。この判決の妥当性は十分に論議されることはなく、巷では「性転換手術は優生保護法違反である」との結論の一部だけが一人歩きすることになった。「この呪縛」に支配されて、その後長い「暗黒の時代」を迎えることになった。

 

この「暗黒の時代」の闇を打ち破るために、日 本精神神経学会・性同一性障害に関する特別委員会は、平成09年05月28日付「性同一性障害に関 する答申と提言」のなかで「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」(以下、初版ガイドライ ン) を公表した。このガイドラインにおいては、性同一性障害は医療の対象とされ、性別適合手術(sex reassignment surgery:SRS)は、性同一 性障害の治療として正当な医療行為であると位置づけられた。実際にこの初版ガイドラインを手続き的にも遵守して、平成10年10月16日、埼玉医科大学において、わが国で初めて公に性同一性障害の治療として性別適合手術が施行された。

 

 

初版ガイドラインに従って性別適合手術を行った医師は、当然、刑事責任を問われてはいない。なぜなら、性同一性障害に対する性別適合手術は、母体保護法28条(平成08年に優生保護法28条より改称)「生殖を不能にすることを目的」にしているのではなく、あくまで性同一性障害に対する治療を目的としており、代替えの方法が現在のところ存在しないことから、母体保護法に違反しないとの考えが法曹界でも趨勢を占めていると思われる。

また、刑法上の傷害罪(刑法204条)については、違法性阻却事由に該当する(刑法35条)3つの要件を満たしていると考えられる.。

  1. 性別適合手術について、患者の同意・承諾がある。
  2. 性別適合手術は、性同一性障害者に対する治療を目的にしている。
  3. 性別適合手術は、医学的に承認された手段・方法に依拠している。

したがって、日本精神神経学会のガイドライン に沿った性別適合手術は、「正当な業務による行 為」、すなわち、「正当な医療行為」と言うことが できるようになった。事実、現在に至るまで多くの性同一性障害に対する性別適合手術に刑事責任が問われることはなく、社会的にも次第に認知され容認を受けて、「正当な医療行為」としての地歩を確固たるものとした。このような性同一性障害の医療の確立に対して日本精神神経学会の初版ガイドラインの果たした役割は大きくその意義は大きかったと言える。

 

2.治療開始例と「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第2版)」

しかしながらその後、わが国において性同一性障害の臨床経験を積むなかでガイドラインの見直しが求められた。最大の理由は初版ガイドラインに沿わないケースが少なからず経験されるようになったことである。概括的な分析を通して、初版ガイドラインに一致しない治療をすでに受けているケースが治療を求めてきた場合に、治療を再構築するための具体的なガイドラインを策定した。

以上の経緯を経て平成14年07月、日本精神神経学会・性同一性障害に関する第2次特別委員会によって「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第2版)」(以下、第2版ガイドライン) が提示された。第2版ガイドラインによって、初版ガイドラインに沿わない治療を開始しているケースへの対応が具体的に提示され、これによって治療の再構築ができるようになった。また、治療は原則的に第1段階(精神的サポート)、第2段階(ホルモン療法と乳房切除術)、第3段階(性器に関する手術)という手順を踏んで進められるが、しかし治療は画一的にこの順序通りに受けなければならないというものではないと明言された。さらに第2段階の治療対象を18歳へと引き下げ、乳房切除術は生殖機能に影響を与えないことから性別適合手術から分離され、第2段階の治療に位置づけられた。このことにより、適応範囲を飛躍的に拡げることになり、治療効率が格段に上がったといえる。

しかしながら初版ガイドラインと同様に第2版ガイドラインでも、性別適合手術の適応判定に対し、ケースごとに倫理にかなっていることを担保するために倫理委員会の承認が必要とされたままであった。

 

3.性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律と第3版ガイドライン

前述の通り、このような臨床活動が普及するとともに「性同一性障害者に対する医療」は、社会に肯定的に受け入れられてきた。そうしたなか平成15年07月特例法が成立し、平成16年07月に施行された。この法律の成立は画期的な出来事であり、性同一性障害の臨床にとっても極めて重要な意義があるだけでなく、性同一性障害の診断と治療に関するガイドラインがこの法律と整合性を保つために再改訂が必要と認識されるに至った。
特例法を概観すると、少なくとも、2つの大きな意義があることが確認される。

1)戸籍の変更ができるようになったこと
この法律によって、これまで性同一性障害の当事者にとって重要な課題であった戸籍の性別変更に道が開かれた。しかし法律の名称が示す通り、対象はあくまで性同一性障害者に限られている。

2)性同一性障害に対する医療が是認されていること
その法文や政省令や診断書の記載要件に、第2版ガイドラインの内容が大幅に取り入れられており、ガイドラインに沿った治療に対する社会的信頼を示すものとなっている。

 

一方、特例法の第3条には次のような要件を示す条項がある。

「第3条家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。

  1. 20歳以上であること。
  2. 現に婚姻をしていないこと。
  3. 現に未成年の子がいないこと。(平成 20年の法改正で「現に子がいないこと」から変更)
  4. 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
  5. その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

現在のところ、この4ならびに5の規定を満たすには、唯一性別適合手術を受ける以外に他の治療法だけでこの規定を満たすことは不可能である。

このことから現段階では、特例法は戸籍上の性別変更の条件として、性別適合手術を前提としていることになる。

 

換言すれば、特例法の上記の条項によって、性同一性障害の治療の1つとして、性別適合手術は法的にも正当なものと認められたと理解すること ができる。したがって,性同一性障害者に対して、これまで確立された性別適合手術を施行する限り、倫理委員会の個別承認を得なくとも、性別適合手術の適応判定をガイドラインに沿って的確に行えば、母体保護法第28条の規定や刑法上の傷害罪(刑法204条)については、違法性阻却事由に該当する(刑法35条)3つの要件を満たしていると考えられる。

そのため、従来の倫理委員会による性別適合手術の個別承認を撤廃し、医療チームの検討により同手術の適応判定を行うこととし、その判定の妥当性ならびに透明性を確保する新たな方策として法曹関係者や学識経験者などの参加を求める性別適合手術適応判定会議の開催と承認を必要とするものとした。

 

また、第2版ガイドライン策定の検討に際して、性同一性障害者の示す症状は多様であり症例による差異が大きいことがすでに記述されており、この多様性は、「生をどのように生きるのか」、そして「性をどのように生きるのか」という価値観ないし人生観の違いに由来する部分が大きいことが 明らかになった。これは侵すことのできない基本的人権に属するものであって、可能な限り厳に尊重されるべきである。そこで、第2版ガイドラインで示されていた段階的治療は廃止され、およそ公共の福祉に反しない限り、身体的治療として、ホルモン療法、乳房切除術(FTM)および性別適合手術のいずれの治療法をどのような順序でも選択できるようになった。

 

一部改定-2018.01.20-

性同一性障害に関する診断治療のガイドライン第4版の主な改正点は、思春期前期の性同一性障害の症例に対する身体的治療(ホルモン療法)をガイドラインに含めたことにあります。 主な改正点は以下の通りです。

 

  1. 性ホルモン療法の開始年齢の引き下げ:性ホルモン療法開始可能年齢を条件付で15歳に引き下げる。 18歳未満で開始する場合には相応の慎重さが求められるため、開始を判断する医師の要件、観察期間などについてガイドラインを設定した。
  2. 二次性徴抑制治療をガイドラインに追加することとなった: GnRHa等による二次性徴抑制治療は、Tanner2期以上の二次性徴を起こしており、二次性徴の発来に著しい違和感を有する者に適応を検討する。 二次性徴発来以前には使用しない。 本人が12歳未満の場合には特に慎重に適応を検討する。 Tanner4期以降の者には、二次性徴がすでに進行しているため、GnRHa等は二次性徴抑制の目的で使用できない(月経停止などの目的で使うことは出来る)。
  3. 18歳未満の者に性ホルモン療法を開始する場合、2年以上ジェンダークリニックで経過を観察し特に必要を認めたものに限定する。
  4. 若年者に対する身体的治療の適応に際しては、法定代理人の承認を得たとしても、本人の意志能力に成人とは違った一定の制限が存在することから、その適否を決める医療関係者の適切な判断がこれまで以上に求められる。 二次性徴抑制、あるいは18歳未満でのホルモン療法開始を判断する2名の意見書作成者は、医療チームに所属して継続的に性同一性障害の診療を実施し、複数の身体治療に関する意見書を作成したものに限定する。 この特例は暫定的なものであり、将来は精神神経学会の認定する所定の研修を受けた者が意見書を作成する。
  5. 二次性徴抑制、あるいは15歳以上18歳未満の者にホルモン療法を行う場合は、別掲の書式による報告書を日本精神神経学会・性同一性障害に関する委員会に提出する。