性同一性障害者の自殺率|絶望の苦しみ

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性同一性障害と呼ばれる人たちの中には、日常的に偏見や蔑視にさらされることが多く、いじめや様々な受けやすいのが現状です。

家族にさえ理解されず、子どもの頃から“オカマ”や”おとこおんな”などといじめられ続けることで染み付いてしまう自己否定感。社会に受け入れられていない孤独感…。それに、人生設計を見いだせず、将来に希望を持てないことも生きづらさの一つです。

 

そこで今回、2011年09月30日にGID(性同一性障害)学会から提出された自殺総合対策大網改正に向けての要望書をご紹介します。

 

自殺総合対策大網改正に向けての要望書

はじめに

平成24年に見込まれる自殺総合対策大綱の改定において、ぜひ、ジェンダー、セクシュアリティの視点で、自殺を考え、対応していく内容を盛り込んで頂き たいと思い、要望書を提出させていただきます。

現在、医師として性同一性障害の診療に当たるととも、GID(性同一性障害) 学会の理事長として学会の運営をさせて頂いております.このような立場で、意見を述べさせていただきます。

(1)性同一性障害当事者における自殺

性同一性障害(Gender Identity Disorder: GID)とは、「性自認(心の性)」と 「身体の生物学的性(身体の性)」とが異なる状態であり、性別違和感のため、自分の身体の性を強く嫌い、その反対の性に強く惹かれた心理状態が続きます。

岡山大学病院は、性同一性障害の総合的診療を行なう拠点となる病院となっており、「岡山大学病院ジェンダークリニック」を1999年の開設以後、多くの 方々の診療を行なっております。2009年までの岡山大学病院ジェンダークリニ ック受診者の自殺に関連するデータでは、上図のようになっています(表1)。

受診者の過半数が自殺念慮を持っていた時期があり、実際に自傷や自殺未遂に到ったものも28%を超えています。また、特にMTF当事者(心は女性、身体は 男性)においては、身体の男性化が取り戻しにくいことや社会との摩擦を持ちやすいため、うつや神経症などの精神科合併症を高率に持ちます。

自殺念慮の発生時期の第1のピークは思春期であり、第2次性徴による身体の変化による焦燥感、中学での制服の問題、恋愛の問題などが重なる時期です(表2)。このため、学校での対応は重要であり、また、それぞれの家庭でそれを理 解するためには一般社会、市民への啓発は重要です。自殺念慮の発生時期の第2のピークは社会へ出る前後です。就職、結婚などの問題で困難を感じ、自殺念 慮が発生していると考えられます。やはり、企業や地域社会での理解を得るための啓発が重要であると考えます。

(2)学校での性同一性障害への対応のお願い

2010年2月、埼玉県の公立小学校の2年生の男の子が女の子としての登校を認められたと報道され(毎日新聞2月12日)、4月に文部科学省は都道府県教委へ「性同一性障害の児童・生徒に対する教育相談の徹底と本人の心情に配慮した対応を」と通知しました。このため、学校においても性別違和感を持つ子どもの支援を考える機会が増えています。

私達の行なった、小・中学校の人権担当研修会に参加した教員への調査では、約 24%(4人に1人)が学校で性別違和感をもつ子どもに接しており、約11%(9人に1人)が自身で担任していたと回答しています。しかし、「GID についてよ く知っている」教員は14.2%であり、実際に性別違和感をもつ子どもに接した教員も「対応できなかった」42.9%、「問題なさそうなので対応しなかった」19.0%と、過半数が対応していませんでした。

学校保健の役割としては,1性同一性障害の子ども自身への支援,2在校生 全体が多様な性への理解を深めるための教育,3保護者への性同一性障害に関 する情報提供の 3 つが挙げられます.言いだせない子どもがいる以上,あるい は,当事者がいることがわかっていれば,当然ながら在校生全体に性同一性障 害を含む多様な性への理解を深めるための教育が必要になります.

これらは、性同一性障害や同性愛など、いわゆるセクシャルマイノリティの子どもが相談しやすい環境を整え、いじめを受けにくくすることにつながります。さらに将来、依然として性同一性障害に対する偏見や差別が社会に存在しているとすれば、それを変えていくことに役立つと考えます。

もちろん、性別違和感が軽い場合や揺れのある場合は、子どもの時期に性同 一性障害と診断するのは難しいことがあります。また、最終的にすべてが性同一性障害と診断されるとは限らず、診断されても治療を必要としないこともあります。しかし、悩みを持っている子どもがいるのであれば、教育的視点とともに医療的視点でも経過を観察し、場合によっては支援をする必要があります。

学校医には、教員や保護者へ医学的説明を行い、医療施設受診の同意を得る支援、あるいは、引きこもりや自殺企図などに対して緊急避難的に医学的判断を行い、学校や専門医療施設と協働して対応することが望まれます。

学校でのこのような取り組み、あるいは、教育と医療の連携が広がるように求めて頂くことを要望いたします。

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(3)就労の場での性同一性障害への対応のお願い

2009年には山口県でFTM当事者が職場を解雇されたのちに自殺し、遺族が会社側に訴訟を起こしたことが報道されています(2009年12月共同通信)。性同一性障害当事者の解雇事例などは診療の場面でも頻繁に遭遇し、性同一性障害を理由に内定解消をされたとしてGID当事者が訴訟を起こした事例なども報道されています。

2010年に、私達の行なった就労状況の調査でも、性同一性障害に関連した辞職や解雇は高率に見られています(表3)。また、職場で性同一性障害に関連した困難を感じることも多いという結果でした(表4)。

就労の場において性同一性障害への正しい知識を啓発し偏見や誤解を解消することは性同一性障害当事者への快適な職場の提供につながります。ジェンダーやセクシュアリティの視点に立った人権研修などの取り組みや職場環境の整備は重要です。

企業などでのこのような取り組み、あるいは、教育と医療の連携が広がるよ うに求めて頂くことを要望いたします。

(4)性同一性障害などに対応する専門家の養成促進のお願い

現在の日本では、依然として、ジェンダーやセクシュアリティに関する問題に対応することのできる支援者は非常に不足しています。医師や看護師などの医療関係者、学校や企業のカウンセラー、教員などの教育カリキュラムの中で、このような問題に触れ、考える機会を増やすような取り組みを求めて頂くことを要望いたします。

おわりに

GID(性同一性障害)学会においても、専門家の養成や各種の学術的な研究などを通して、ジェンダーやセクシュアリティに関連した自殺の防止に取り組む必要性を感じております。また、学校や企業での取り組みへも協力したいと考えております。

性同一性障害以外にも、同性愛(ホモセクシュアル)や性分化疾患(インター セックス)などにおいても、ジェンダーやセクシュアリティに関連した自殺が高率な状況があります。平成24年に見込まれる自殺総合対策大綱の改定において、ぜひ、ジェンダー、セクシュアリティの視点で、自殺を考え、対応していく内容を盛り込んで頂くことを再度、お願いいたします。

文献

  1. 中塚幹也::学校保健における性同一性障害:学校と医療との連携.日本医事 新報 No.4521:60-64,2010.
  2. 針間克己,石丸径一郎.「性同一性障害と自殺」精神科治療学 25:247-251,2010.
  3. 中塚幹也:「新連載:性同一性障害の生徒の問題に向き合う」.中学保健ニュ ース第 1445 号付録,第 1446 号付録,第 1447 号付録,少年写真新聞社, 2009.
  4. 中塚幹也,安達美和,松尾環,他:性同一性障害の説明と治療を希望する年齢に関する調査.母性衛生 46:543-549,2006.
  5. 松嶋淑恵,関井友子:性別違和をもつ人々の雇用と収入に関する実態分析.GID(性同一性障害)学会雑誌 3:13-19, 2010.

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